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江波山気象館 メールマガジン
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2011年 1月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ

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広島市江波山気象館から
気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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生物季節観測の観測種目が見直されました
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 気象庁では気温などの観測だけでなく、季節の遅れ進みや地域による気候の違いなどを知るために1953(昭和28)年から気象台ごとに種類を決めて植物が芽を出したり、花を咲かせたり、紅葉した日や、動物の姿をはじめて見た日や、鳴き声をはじめて聞いた日を記録しています。調べるのは、ソメイヨシノ(サクラ)の開花やアブラゼミの初鳴、カエデの紅葉など私たちにも親しみがあり、季節の移り変わりを感じさせる現象です。

 2010年12月31日までは、全国で共通して調べる規定種目と、選択種目(規定種目だけでは季節の推移を十分に示すことができない場合にその不十分な期間を補うためや、特定の地方には分布しているためその地方の季節の遅れ進みを知るために規定種目とは別に設定する)を観測の対象としていました。

規定種目
 動物:ヒバリ、ツバメ、モンシロチョウ、ウグイス、トノサマガエル、キアゲハ、
    シオカラトンボ、ホタル、ヒグラシ、アブラゼミ、モズ
 植物:ウメ(※)、ツバキ(※)、タンポポ(※)、ソメイヨシノ(※)、
    ヤマツツジ(広島地方気象台ではミツバツツジを観測)、ノダフジ(※)、
    ヤマハギ(※)、アジサイ(※)、サルスベリ(※)、ススキ、
    イチョウ(※)、イロハカエデ(※)

選択種目(広島地方気象台の場合)
 動物:トカゲ、ニホンアマガエル
 植物:シバ
 
 2011年1月1日から、この規定種目と選択種目といった分け方をやめて観測種目の見直しを行い、全国的に気温との相関が高い種目(上の表に※印をつけたもの)を中心に調べていくことになりました。この結果、広島地方気象台では2011年からトノサマガエルとホタルの観測を廃止することとなりました。トノサマガエルは1974(昭和49)年に確認されたのを最後に36年間、ホタルは1998(平成10)年に確認されたのを最後に12年間ずっと姿を見ることができない年が続いているからです。気象や生物季節などの現象は年ごとには差が大きいので、30年の平均値を平年値として比べるときの目安にしています。長く観測できないときが続くと、その平均値をとってもばらつきが大きくなってしまって目安にならないのです。

 生物季節観測は、基本的には観測する場所を定めて行っています。植物であれば、気象台の構内やその近辺(広島地方気象台では近くにある縮景園という庭園と気象台の露場(気温や雨などを観測する所))で調べる植物を数本決めておいてそれを調べています。動物は、動くことができるため、いつも同じ場所にいるわけではありませんから、気象台近辺(おおむね、水平距離が半径5km以内で、標高が±50m以内)で、気象台の職員が通勤途中などに実際に見た場合に記録しています。また、調べるのは、自然に分布しているもので、人間が飼育したり、放流したりしたものは調査対象になりません。気象台のある場所から5kmとなると、西は広島市西区己斐や古江、東は海田町、北は安佐南区川内くらいに当たります。トノサマガエルは主に水田や池、ホタルは清流に生息する生物ですから、このような都市部が生息に適していないのも無理はありません。人間が快適な生活を送るのと引き換えに、トノサマガエルやホタルといった以前は見ることのできた生物たちの姿が見られなくなってしまったことや、そのために生物季節観測で昔のデータや他の地域のデータと比べることができなくなってしまったのはとても残念なことです。

 さて、季節予報によると、1月までの冷え込みとはうってかわって、この先1ヶ月は気温が高めに推移すると予測されています。どうやらこれからしばらくは冷え込みが緩み少しあたたかくなりそうです。

 これから2月、3月とウメやタンポポが開花したり、ヒバリやウグイスが鳴いたりと生物たちの活動も活発になります。このような生物の活動は目をひきますから、今頃から自分の住んでいる付近の自然に関心を向ければ、季節の変化がさらに楽しめると思います。まずは生物季節観測の対象になっている生物から、平年値の前後には「そろそろ、見られる(聞くことができる)かもしれないな」と注意をしながら暮らしてみるのも楽しいですね。


気象庁 生物季節観測の情報
http://www.data.jma.go.jp/sakura/data/index.html

広島地方気象台で観測された生物季節観測
(2006年からのデータと、最も早く観測された日と遅く観測された日、
 平年値を見ることができる)
http://www.jma-net.go.jp/hiroshima/seibutu.html

気象庁 季節予報
http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/