江波山気象館 メールマガジンお天気かわらばん

2020年  5月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ
広島市江波山気象館から気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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▲▽ 湿度のはなし ▲▽

暖かくなってくると、蒸し暑さも気になるようになります。
これまでだと、暖かい季節に湿度が高くなることに喜ぶことはあまりなかったですね。
冬は、乾燥が気になり、インフルエンザの予防などのためにも湿度低下を気にする方も多いとは思いますが、今年は暖かくなっても、室内の湿度が下がらないように気をつけている方も多いのではないでしょうか。
みなさん、冬は乾燥するので湿度は低いと思われるかもしれませんが、冬(12月〜2月)の広島の湿度の平均(1981年〜2010年の平均)は67〜69%、一方、春(3月〜5月)の湿度の平均は63%〜66%です。冬のより春のほうが湿度は低いですね。
これは、一般的に湿度というと、飽和水蒸気量(1立方メートルの空気中に含むことができる限界の水分[水蒸気]の量)と実際に空気中に含まれている水分(水蒸気)の量の割合(%)で表される相対湿度が使われているためです。
飽和水蒸気量は気温が高いほど多くなり、気温が低いと少なくなります。例えば、気温5℃では約6.8g/立方メートルに対して30℃では約30.4g/立方メートルと大きく異なります。
広島の2月の平均気温6℃では飽和水蒸気量は約7.3g/立方メートルであり相対湿度100%であっても1立方メートルあたり7.3gしか水分は含まれていないことになります。一方、8月の平均気温28.2℃では、相対湿度100%で27.5gと3倍以上の水分が含まれることになります。
冬の2月の相対湿度67%より低い63%の4月でも12.5g/立方メートルとなります。
また、広島の1月と10月は相対湿度の平均が同じ68%ですが、飽和水蒸気量は1月が約6.9g/立方メートルに対して、10月は約15.6g/立方メートルと2倍以上になります。このように相対湿度が同じであっても、気温の高低によって空気中に含むことができる水分量が異なるのです。
ここで、相対湿度とは別の湿度の表しかたを見てみましょう。絶対湿度とよばれるもので、空気1立方メートル中に含まれる実際の水分(水蒸気)の量を表します。
気温と相対湿度の平均値から広島の月ごとの絶対湿度を計算で求めてみると、1月からそれぞれ、4.7、4.9、5.7、7.9、11.0、14.8、19.2、19.5、15.6、10.6、7.6、5.5(単位はg/立方メートル)となり1年間で大きく変化することがわかります。ここに冬は乾燥し、夏は蒸し暑いといわれる理由があるようですね。
これだけだと、湿度は絶対湿度のほうが空気中の実際の水分量がわかり都合がよいように思えますが、絶対湿度では、空気中に含むことのできる水分の限界量である飽和水蒸気量との割合がわからないため、加湿のし過ぎによる結露やカビの発生などの問題もあります。相対湿度と絶対湿度の違いを理解し、上手に使うことで生活をより快適にまた安全に送りたいものです。