江波山気象館 メールマガジンお天気かわらばん

2020年  7月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ
広島市江波山気象館から気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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▲▽ 台風の風速の基準は何故17.2m/s? ▲▽

梅雨明けが待ち遠しい時期となりました。しかし、梅雨の長雨から解放されたと思ったら今度は、本格的な台風のシーズンを迎えることになります。
そこで、台風の定義は?
(1)北西太平洋(赤道より北で、東経180度より西)または東シナ海にある熱帯低気圧で
(2)最大風速が17.2m/秒以上のもの
とされています。ここで小さなギモンが。
(1)の位置の範囲は、どこかで線引きをする必要があるのでよしとして、(2)の風速の基準である「17.2m/秒」については、どうして“17.0”や“17.5”ではなく細かく刻んだ“17.2”なのでしょうか?
小さな数字の疑問かもしれませんが、今回はこの小さな数字に注目してみたいと思います。日本の台風の風速の基準「17.2m/秒」の根拠は、アメリカによる台風の基準にあるようです。
「気象百年史」(1975年 編集:気象庁)によると、戦後しばらくの昭和27年まではアメリカの熱帯低気圧の分類に準じて風速34knot(ノット)以上63knot(ノット)までを熱帯性低気圧(Tropical Storm)、風速64knot(ノット)以上を台風(Typhoon)としていました。
日本が独自の台風の基準を設けた昭和28年以降も、アメリカの基準をもとにそれまでの熱帯性低気圧(Tropical Storm)と台風(Typhoon)を合わせて風速34knot(ノット)以上を台風としたようです。
ここで、風速の単位として使われるknot(ノット)とm/秒の関係についてみてみます。
Knot(ノット)は国際式天気図などでも使われている速さの単位で、1knot(ノット)は1時間に1海里(1.852km)進む速さで、1knot=1.852km/時間、m/秒では0.5144m/秒。つまりknot(ノット)の数字を半分にするとおおよそのm/秒がわかることになります。
さて、話を元に戻して昭和28年以降の日本の台風の風速の基準である34knot(ノット)をm/秒に換算してみると34knot×0.5144=17.489m/秒(17.5m/秒)となります。ですが、日本の台風の風速の基準は17.2m/秒以上となっていて、その理由には、34knot(ノット)は33.5knotから34.4knotまでを四捨五入したものを34knotとして扱う実態があるようです。
したがって、もっとも数字の小さい33.5knot以上を台風の風速基準として、計算した結果の33.5knot×0.5144=17.232m/秒から17.2m/秒が日本における台風の風速の基準となったということです。
世界気象機関に採択されているビューフォート風力階級表を基にした気象庁の風力階級表の風力8の範囲も17.2m/秒(34knot)以上20.8m/秒(41knot)未満となっていて、四捨五入が関係していることがわかります。