江波山気象館 メールマガジンお天気かわらばん

2020年12月号
メールマガジン版江波山気象館情報しおかぜ
広島市江波山気象館から気象に関するさまざまな情報をお届けします。
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▲▽ 上空の寒気と離岸距離 ▲▽

12月24日、気象庁は年末年始の気象の見通しとして、「30日頃から日本付近は強い冬型の気圧配置となる見込み。年明け(少なくとも1月5日頃)にかけて、強弱はあるもののこの状況が続き、上空の寒気は12月14日から21日の大雪の時より強く、大雪となる地域も広範囲となるおそれがある。」と発表しました。
また、28日には大雪に対する国土交通省緊急発表として、「30日から1月1日頃にかけて強い冬型の気圧配置となるため、北日本から西日本にかけての日本海側を中心に大雪や大荒れとなるおそれがあり、平地でも大雪となるおそれがあります。東日本と西日本の太平洋側の平地でも積雪となるところがある見込みです。その後も日本海側を中心にさらに降雪量が増えるおそれがあります。」と警戒を呼びかけました。
天気予報などではおなじみの「上空の寒気」という言葉ですが、上空とは?寒気とは?と思う方も多いのではないでしょうか。
気象庁では高層気象観測と言って1日2回、朝の9時と夜の9時に気球に付けた観測装置によって空の高い場所の気温や風の状況を観測しています。この観測で得られた上空約1500mや5000〜5500mの気温データが降水の雨雪判断や大雪の目安として利用されています。
一般的には、上空1500m付近の気温でマイナス6℃くらいが雨か雪の分かれ目といわれています。また、上空5000〜5500m付近の気温のマイナス36℃が大雪の目安とされています。テレビの天気予報などでも大雪について解説される際にはよく出てくる数字です。もちろん地上付近の気温や湿度なども影響しますので、あくまでも目安ではあります。
上空の寒気については、気象衛星の雲画像からもその強弱を知ることができます。
大陸から日本海上空に寒気がやってくる際に、日本海上に筋状の雲ができることはよく知られています。この筋状の雲ができ始める位置が、大陸の沿岸からどの程度離れているかを示すものが「離岸距離」と言われます。この「離岸距離」が短いほど、つまり大陸沿岸からすぐに筋状の雲ができていると寒気が強いと言えます。
寒気による日本海上の雲は、大陸からの寒気に比べて暖かい日本海の海面から蒸発した水蒸気が大陸から流れ込む冷たい空気によって冷やされることで発生します。このため、寒気が強ければ強いほど水蒸気は冷やされて雲ができやすいため、大陸から日本海に出てすぐに雲が発生し、寒気が弱い場合は、雲ができ始める位置が大陸から離れた場所から始まります
。 気象衛星の雲画像も天気予報ではおなじみです。今年の年末年始はステイホームでテレビやインターネットを見る機会も増えると思います。気象情報ウォッチングにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。